<目次>
第1章 医療の歴史
1-1. 5つの医学
1-2. 日本の医療の歴史
1-3. 現在の医療保険制度
第2章 CAMとは何か
2-1. 科学としての現代医学
2-2. 補完代替医療の研究状況
2-3. 補完代替療法とは何か
第3章 CAMの種類
3-1. CAMの日米比較と種類
3-2. CAMの今後、新たな可能性
第1章 医療の歴史
1-1. 5つの医学
現代のようなたったひとつの医学ではなく
19世紀ヨーロッパでは、5つの医学が共存していました。
- ナチュロパシー:食事療法
- ホメオパシー:同種療法
- オステオパシー:体の歪みを整える
- サイコパシー:心の歪みを整える
- アロパシー:薬物対処療法
この中で一番下のアロパシーが今でいう現代医学です。
また、これだけが自然治癒力を抑える方向に働きます。
もともと怪我の治療とか細菌による激しい炎症などの場合に
アロパシーが緊急の一時的な対策として使われていたのですが、
今では、これのみが医学、というようになってきました。
不思議といえば不思議ですよね。
ナチュロパシー、つまり食は現在でも健康の基本だし
オステオパシーの流れをひく整体、カイロなどのボディーワークも、
内蔵疾患への対応や体全体の免疫に関わると言われています。
サイコパシー、つまり心理療法がある局面で
とても効果的であることは、誰しも漠然とですが、知っているでしょう。
日本で知られていないホメオパシー
ただ日本ではホメオパシーというのがあまり知られていません。
ホメオパシーは、
今から200年前にドイツの医師ハーネマンが
その生涯をかけて確立させた自己治癒力を使う同種療法です。同種療法の起源は古代ギリシャの
ヒポクラテスまでさかのぼることができ、
「症状を起こすものは、その症状を取り去るものになる」
という「同種の法則」が根本原則になっています。
(日本ホメオパシー医学協会のホームページから)
これは実は日本でも昔から鼻水が出ると
長ネギを首に巻いた、というのがあります。
これは長ネギに鼻水を出す成分があるそうで
鼻水には鼻水を出すものをそして出し切る、という発想です。
実はキチンキトサンの元祖エビの甲羅を煎じて
はしかの子供に飲ませたというのも
より熱を出させて早く治すためだったといいます。
熱 ⇒ 抑えるではなく
熱 ⇒ 出させる
ということですね。
ホメオパシーはこの原理を用いて
多くの病気の症状に対応できる
レメディーの大辞典『マテリア・メディカ』を作りあげ、
ホメオパシー医学を確立しました。
実は今でもヨーロッパでは
このホメオパシーがかなり利用されています。
イギリス、ドイツ、インド、メキシコ
南アフリカなどで盛んに研究され続け、
おそらく21世紀の
もっとも大きな代替療法になるのでは、とさえ言われています。
1-2. 日本における医療の歴史
明治16年(1883年)明治政府は
「医師免許規則」「医術開業試験規則」を出しました。
この時より、医師と名乗れるのは
西洋医学教育機関を卒業したものか、
全ての試験科目が西洋医学に属する
「医術開業試験」を合格した者のみ、となりました。
漢方医学そのものは潰されてはいないけれど、
漢方医学を取り扱えるのが西洋医学を学んで試験に合格した医師のみ、
となったことから、従来の漢方医師は
大打撃をうけることになったそうです。
西洋医学以外の療法はすべて原則、認めない
という明確な国の方針がこの時に決まったというわけです。
実はこの時、接骨医も漢方医と同様の道を辿ることとなり
接骨医も接骨業を行う為には「医術開業試験」に合格して
医師にならないとダメ!となったそうです。
それまで、接骨医として生計を立てていた人は
たいへんだったんだろうなぁと同情してしまいます。
ちなみに医師法は昭和23年、薬事法は昭和35年制定です。
医師法では「医師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない」とあります。
また医師法17条には「医師でなければ、医業をなしてはならない」とあります。
この部分が、後に医師法違反で訴えられる人を生むことになります。
2010年、彫り物師が逮捕されています(タトゥーは医業に含まれるとの見解から)
もちろん、医師免許のない代替療法家が、診断をすることも医師法違反となります。
薬事法は「医薬品・医療機器の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」として
昭和35年(1960年)に制定されました。
注意すべきは、医薬品以外の、医薬部外品、化粧品などの定義、
健康食品の規制にも活用される点です。
2014年に改正にあたり、その名称が「薬機法」に改名されました。
改正のポイントは以下のとおりです。
- 医療機器の承認等についての医療機器の特性を踏まえた制度の創設
- 再生医療等製品の新設
- 安全性に関する規制の強化
薬機法では、健康食品は一般の食品と同じ扱いです。
もちろん、効果効能の表記は認められていません。
日本の医療保険制度について
1961年、日本の医療保険制度が生まれました。
この制度は、世界的に見てもまれな特徴を持った制度と言われてきました。
海外と比べてみると、
イギリスでは9割の公的保険がありますが、
残り1割は民間会社が請け負います。
またかかりつけ医が登録制で決められていて、
自由に医者を選ぶことはできません。
アメリカはご存じのように保険はありません。
民間の保険会社によって、負担額は変わります。
虫垂炎で手術を受けると、150万円~440万円もかかります。
(日本は、30万円)
フランスは公的皆保険、個人負担は3割、日本と似ていますね。
かかりつけ医制度はありますが、ほかの医者を選ぶこともできるようです。
日本は世界トップクラスの長寿国となり、乳幼児の死亡率も大幅に下がり、
2000年にはWHOが、日本の医療保険制度を総合点で世界1と評価しました。
しかし、問題も山積しています。
日本の国民医療費の総額は、
毎年1兆円を超えるペースで増え続けており、
現在の仕組みのままでは、国民皆保険制度を支えることが難しくなってきている現状です。高齢化や医療技術の発達によって、医療費が年々増え続けるなか、
将来も国民皆保険制度を維持していくには、
負担の仕組みを超高齢社会にあった制度に
変える必要があるとともに、
私たち一人ひとりが健康への意識を高め、
医療費を節約していくことが重要です。(健康保険組合連合会 けんぽれんホームページより抜粋)
第2章 CAM=補完代替医療とは何か
2-1. 科学としての現代医学
現代医療を支える理論は、科学的方法論です。
20世紀は科学の時代だったと言えるかもしれません。
鉄腕アトムというアニメが、1963年から1966年まで放映されました。
♬空を超えて~、ラララ星のかなた~♬
という主題歌が耳に残っていますが、
あれは谷川俊太郎さんの作詞だったのですね。
それはともかく、
この歌詞の中に ♪心やさしい、ラララ科学の子♪ という歌詞がありますね。
まさにこの時代、
科学万能主義「科学の子」が生まれたわけです。
科学の発達は多くのものを私たちにもたらしました。
科学なくして、今の繁栄はほぼ、考えられないでしょう。
医療、建築、車、通信、IT、コンピューター、遺伝子学、薬学、
どれもこれも、科学技術の上に成り立ってきました。
私たちはいつの間にか、科学万能主義に陥り、
科学的方法論ではわからないことまで、科学でとらえようとしてきました。
その一つが、精神、心の問題です。
これを脳という物質でとらえようとしたのが、現代精神医療です。
セロトニンやドーパミンという脳内ホルモンという物質で
心の病を解明しようとしているわけです。
しかし、それが身体の病気の治療程には
効果を上げているとは、思えない現状があります。
科学的方法論とは、数値化して計測する、という方法論です。
つまり、数値化したり計測できないものは、科学の方法論では扱えない、
不向きである、ということです。
私たちは経験的に、
見えないもの、数値化できないけれども、
そういうものが確かにあることを知っています。
心と呼ぶか、魂と呼ぶか、
人によって異なりますし、
またそういう存在を信じない人もいます。
しかし、科学の方法論では拾いきれない、漏れて抜け落ちる部分がある、
そう感じている人も多いのではないでしょうか?
今の科学的医療を、現代の迷信だと言った女医さんがいます。
エビデンスという神様を祭る迷信なのだ、と。
これは痛烈でした。
しかし、医者の中にもそう感じる人がいる、ということは
驚きであるとともに、嬉しい発見でした。
2-2 補完代替医療(CAM)の研究状況
当初、CAMは末期がん患者とか、難病とか、
現代医学が治療不可能と認めた患者を対象とした、代替医療としてスタートしました。
しかし、今は現行の医療を補うという意味で「補完」という言葉を付け加えました。
さらには、未病者に対する予防医学へと、漸次、前倒しの方向へと進んでいます。
蒲原聖可著『代替医療 効果と利用法』から
WHOによると、世界の健康管理業務の65~80%が「伝統医療」による
海外を見ると、インドのアーユルベーダ
イスラムのユナニ医学、ヨーロッパのホメオパシー、中国の中医学(漢方医学)など。
とあり、世界的にはまだまだ伝統医療が強いことがわかります。
しかしこの伝統医療も、アメリカや日本では、もちろん代替医療の範疇です。
日本では2002年、65.5%がなんらかの代替医療を利用、
しかし、代替医療について講座を持つのは
金沢大学、大阪大学の大学院のみです。
つまり、日本のお医者さんは補完代替医療について
ほとんど、何も学んでいない、ということ。
なのでサプリメントや他の方法について相談しても原則的に無駄、ということです。
ところが、アメリカでは、
アメリカでは1997年、42.1%がCAMを利用、
しかし研究費は、
1992年200万ドルだったのが、2004年、1億1800万ドルへ、
そしてそして2014年、130億円となっています。
これはアメリカの国立補完代替医療センターの予算ですが、
2014年に国立補完・健康総合センターと改名しています。
代替医療という言葉を削っているのには、どんな意味があるのでしょうか。
2-3 補完代替医療(CAM)
日本における補完代替医療の定義は、
日本で採用されている現代西洋医学以外の医療の総称です。
■日本ホリスティック医学協会設立(1987年)
「人は何故治るのか」(1993年10月初版)アンドルー・ワイル博士の著書に触発され、
人を身体だけではなく、丸ごと診ていかねばならない、
という意識の医学者たちで設立された学会です。
現在、名誉会長は帯津三敬病院名誉会長の帯津良一氏です。
この学会は、人間・地球・生命丸ごとの医療を目指すとあり、その後にできた、統合医療学会や補完代替医療学会とは大きく異なる点があります。
最も違う点は、その参加者の層です。
ここは、医療従事者でなくとも、
いわゆる代替療法家でも、
また、一般市民でも、この会の趣旨に賛同するものは、
全て参加OKという開かれた団体だという点です。
■日本補完代替医療学会設立(1998年)
石川県金沢市に事務局を置くこの学会は、
医療従事者のみで構成されています。
[現代西洋医学領域において、科学的未検証および臨床未応用の医学・医療体系の総称]と定義づけています。
確かに、これらの中には、非科学的であり西洋医学を実践する医師にとっては
受け入れ難い内容のものもありますが、
作用機構や有効性が科学的に証明されているものが急増しているのも事実です。
国立図書館医療目録データベース(MEDLINE)において
“代替療法”の名での引用は、
1966年以来、年12%の割合で増加しており、
在来医療の文献の増加率の約二倍であることがそれを裏づけています。日本補完代替医療学会のホームページより抜粋
■日本統合医療学会設立(2008年)
仙台市に事務局を置くこの学会も、原則は医療従事者のみで構成されています。
これまで多くの医療機関などで実践されてきた医療は、
「対症療法」を中心とした近代西洋医学を根本としてきました。
しかし昨今、国際的な医療の趨勢(すうせい)は、
単に病だけではなく、
人間の心身全体を診る「原因療法」を中心とした
伝統医学や相補・代替医療も必要であるという考え方に急速に移行しています。統合医療とは、二つの療法を統合することによって
両者の特性を最大限に活かし、
一人ひとりの患者に最も適切な『オーダーメイド医療』を提供しようとするものです。日本統合医療学会のホームページより抜粋
ここでは、これまでの近代西洋医学が
「対症療法」を中心としてきたことが明記されています。
しかし、理事の顔ぶれを見ても、代替医療関係のものは
「一般社団法人ヨーガ療法学会」の関係者が2名くらいで、
他の代替療法に関係する人は一人もいないという状況です。
第3章 CAMの種類と可能性
3-1 CAMの日米比較と種類について
日本において、がん患者が何等かの代替療法を活用する割合は44.6%(2005年の調べ)
ところが、その内訳が
- 健康食品・サプリメント 96.2%
- 気功 3.8%
- 灸 3.7%
- 鍼 3.6%
となっていて、極端に健康食品などに偏っているという状況です。
ところがアメリカでは種類が豊富で
- 食品関係(プロバイオティクス、ハーブ、ビタミン、ミネラル)
- 手技を使うもの(カイロプラクティック、オステオパシーなど)
- 心身に働きかけるもの(瞑想、ヨガ、気功、太極拳、イメージ療法など)
- その他(ホメオパシー、ピラティス、波動、エネルギー療法など)
となっています。
さすがに代替療法の発達している国ですね。
日本はまだまだ、知識が足りないということでしょうか。
補完代替医療の種類については、上記のほかに
各国に長い間伝わる伝統医学があります。
- インドのアーユルヴェーダ
- イスラムのユニナ医学
- 中国の中医学
- チベット医学
これらが4大伝統医学と呼ばれるもので
ここから発生した様々な医療が各地に存在します。
3-2 CAMの今後、新たな可能性
1980年代より、じわじわ起きている「対話の力」
これがもしかしたら、
次世代のCAMの主流になるのでは、と私は感じています。
- 精神腫瘍学
- ナラティブアプローチ
- オープンダイアローグ
- ユマニチュード
- 東京マギーズ
- 哲学カフェ
- 自助グループ
ここに挙げたものは、すべてベースに「対話」があります。
精神腫瘍学とは、がん患者やその家族の精神面をケアすることで
がん治療の成果をよりアップしようとするもの。
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ナラティブアプローチとは、
患者は知識や医療技術だけを求めているわけではない、
精神面での、安心や信頼などをも求めている、という考え方からきているアプローチです。
それに応えるには、治療者(強者)VS 患者(弱者)という構図から出て、
つまり専門性を捨て、患者のストーリーを聴くことが必要だということです。
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オープンダイアローグはフィンランド生まれの、
統合失調症の治療法でありながら、
先ほどのナラティブアプローチと、とてもよく似ています。
ドクターだけじゃなく、ナースもケアマネージャーも
患者とその家族や友人など複数の関係者で
対話を繰り返すことで、治療効果を上げています。
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ユマニチュードは、フランスから来た認知症者へのケアの技法ですが
これも、たくさんのスキルがある中で、
最終的には愛情ややさしさを伝える対話が、とても重要な位置を締めます。
東京マギーズや哲学カフェは
病院でも家でもない「場」で
対話できやすい空間を作り、やはりその中で対話によって
人が癒されていく仕組みを作っています。
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どの自助グループも、大切にしていることは対話、
同じ病気の当事者同士の対話によって、
互いに癒し合っていくという仕組みを作り成果を上げています。
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私たちは患者である前に、人間です。
人は人の海の中でしか、生きていけない動物です。
最終的に、人は人で癒されるほかなくて、
その最もシンプルな形が、ダイアローグ=対話なのかもしれません。
セルフメディコ元気塾も、
対話を大切にしたいと思っています。
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