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啐啄(そったく)同時

啐啄同時

9か月、本音の聞けないコーチング

10年以上も昔、まだまだコーチとして駆け出しだったころ、
9か月もかかって初めて、クライアントの本音を聞くことができた、
という体験があります。
(守秘義務があるので、かなり脚色しています)

彼はとても明るくて仕事熱心なリーダーでした。
うまくいかないことがあっても、まったくめげない、
常に未来志向で、次はこうやる、とすぐに次のゴールを設定し
ニコニコがんばる、という人でした。

ビジネスコーチとしての関わり

私がコーチとして彼にかかわった時は、
仕事上の販売数値目標があり、
それを3か月でクリアーする、というゴールでした。
ビジネスコーチでした。

ところが、1か月過ぎ、2か月過ぎ、
3か月めになっても、目標の10分の1もできていません。

明らかに目標と行動がズレている、
修正すべき原因がどこにあるのか、
その日は、そういった内容のセッションになると予想していました。

ところが、彼はいつもどおり、元気にニコニコと
今、こういう方面にアプローチしてて来月は必ずこうなると思います。
と、やはり来月の話をします。

ん?と何度も、彼の話をさえぎって、
今月の反省点はありますか? と聞きたくなる、

でも彼は、うきうきと楽しそうに、
新しい見込み客の話をして、
まだ何も契約に至っていない見込み客から
広がる紹介先の予想まで立てて、

今月、3か月めのゴールが達成できないかも、
という現実の話をしようとしません。

それって、まだ見込みの段階だよね?
と、つい言いたくなるのを我慢して、相手の話を聞き続けます。
「だから来月は必ず、達成します。」
と明るく言い放って、その日は終わりました。

延々と続くカラ元気

そして驚くなかれ、そういったやり取りが、
8か月過ぎようというところまで続いたのです。

コーチングは、3か月で1クールなので
これから、どうする?と聞くと
そのたびに、継続します、と明るく答えます。

最初の状態から売上はほぼ、横ばいで
目指した数値にはほど遠い状態が続いていました。
しかも、セッションの中で
彼の口からは一度も、やってきたことの反省や、
困っている感情は語られません。

いつも同じように、明るく、前向きなのです。

彼の課題

だんだん、私にはそれこそが、
彼の中の大きな課題なのだ、と思えてきました。

だとすると、
自分からそれを口にするまで、
私の方から触れるのはやめようと思い、

彼の話す方向へ沿い、身を任せるように、
ただただ彼の言葉をそのまま、聴き続けていたのです。

そうして、7か月、8か月、と
表面は明るい、でも空しいセッションが続きました。

 

そうして、9か月目のある日
突然、その瞬間がやってきたのです。

会うや否や、開口一番に
「あの・・・・コーチ、
僕、どうしたらいいかわからなくて・・・困っているんです」

いままでの明るさは掻き消えて、
困り果てて顔をゆがめている、
今にも泣き出しそうな子供のような表情でした。

彼のそんな顔を初めてみて、
私は心の中で
何かが溶けてゆく気がしました。

「困っている」と初めて言った瞬間

そうなんだ、困っているのね、

「はい、僕の何が悪いのか、
一生懸命やっているのに、何故、ゴールに近づかないのか・・・」

そこからやっと、本音のセッションになっていきました。

彼が私に対して、本音を言ってもいい、と
許可を出すのに9か月もかかった、ということ・・・・

いえ、
これまで彼はおそらく誰に対しても、本音を出してこなかった、
出せない何かが、きっとあったのでしょう。
それくらい怖かった、のかもしれません。

でもそう口にした瞬間、彼は少し楽になったみたいでした。
無理やり、カラ元気を出さなくても大丈夫、
ここでは、取り繕う必要はないんだ、と
たぶん、そんな風に感じたのだと思います。

”9か月も” から ”たった9か月で”

そう考えると、それがたった9か月で
「困っている」と言えるようになった、のはすごいことです。

それは、たぶん生まれてはじめて
ジャッジされることなく傾聴された、
つまり、守られた、
というクライアント体験をしたからかもしれません。

待つこと、
それはコーチの大事な役目です。

クライアントは卵の中のヒナのように、
自分からカラを破って出てくる時期がある、
それまでは、コーチが何とかカラを破ろうとしても無駄。

ヒナがカラから出たいと、卵の内側からつつく、

啐啄(そったく)の機

そのかすかなタイミングを逃さず、親鳥は、卵の外からつつく、
そしてヒナが孵るのです。
これを「啐啄(そったく)同時」と言います。

まさにこうして、
新しいクライアントが誕生するのです。

コーチの仕事は、クライアントをしっかり見つめながら、
ただ待つこと、ただ成長を信じて待つこと、
その意味を本当に実感した瞬間でした。

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