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使わない能力を手放し、私たちは何を残すのか

読書

本を読まない人が増えた、と言われています。

東京大学大学院総合文化研究科の
酒井邦嘉教授らが、
全国の18歳~29歳の学生1062人を対象に
「書くこと」と「読むこと」の実態を調査しました。

学生の5人に1人が「本も新聞・雑誌も全く読まない」
これは若者が文字を読まなくなったというより、
読むものが紙媒体の活字ではなく、
WEB上の文字や動画、オーディオブックなどに
変わってきている、ということです。

さて、そんな中でオランダの心理言語学研究所で
上級研究員を務める、ファルク・ヒュッティヒが、
読書が脳や知能・記憶に与える影響を述べています。

彼は、
「読書は生まれつき備わった能力ではなく、
何年にも渡る膨大な訓練によって
身に付ける、極めて複雑な技能」

だと言っているのです。

私たちは、本を読む時、多くの単語や文構造、
代名詞が何を指しているのか、など、
同時に頭に留めておかなければならず、
ワーキングメモリをフル活動させています。

これによって、記憶力が鍛えられるのだそうです。

記憶とは、「塩」から「コショウ」を連想するように、
互いに結びついた意味からなる
巨大なネットワークを築いています。

読書は、知能検査で測定される多くの能力を
高めることが分かったそうです。

言語能力、文章理解、論理的思考、
それ以外にも、流動性知能と呼ばれる、
新しい場面に適応し、未知の問題を
過去の知識に頼らず、その場で解決する能力も
高くなった、と述べています。

読書がそれほどの効果を持つとは、
ちょっと驚きです。
それなら、読書離れは、私たちの脳を
どんどんバカにすることになる?
と、少し心配になります。

この記事の中にも、
文字をいっさい読まなかったソクラテスの話が
出てくるのですが、
私は、本居宣長を思い出しました。

文字無き世の人はさぞ不便だったろうと
思われるかもしれないが、
そんなことはない、

文字を知る人は、万の事を文字に預けるが、
文字を知らない人は、
それができないからこそ、
かえってよく覚えているものだ、

というような意味のことを言っています。

私たちは、文字どころか、
スマホやPCまで駆使して、
昔は10個くらいのよく使う電話番号など
ちゃんと覚えていたのに、
あっという間に覚えなくなりました。

漢字も日々、加速的に忘れていきます。

私たちの脳の中で何が起きているのでしょうか。
必要のなくなった能力が消えていっている?

さらに今は、AIがあります。
検索、要約、翻訳、文章化、
これから私たちは、さらに多くのことを
AIに預けていくことになります。

そして、使わない能力が
ますます増えていくことでしょう。

人間に必要な能力は
今、ものすごい勢いで変化しているのかもしれません。

不要な能力が消えて、
では、何を私たちは、手元に残すのでしょうか。
最後に残る人間らしい能力とは
いったい、何なのでしょうか?

小林秀雄が失ってはいけないもの、
磨き続けるべき能力として語った、
「想像力」は、
もしかすると、その一つかもしれません。

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