元気塾Blog

「日本人=米」は本当か

和食

「日本人といえば、米」
そう思っている人、多いですよね。
私も、もちろんそう思っていました。

日本人は昔から米を食べてきた。
米は日本文化の中心で、
神様にもお供えし、正月には餅を食べる。
だから、日本人=米。

……でも、本当にそうなんでしょうか?

ちょっと面白い研究が発表されました。
研究者が調べたのは、なんと、
江戸から明治にかけての本の表紙に使われていた「古い和紙」。
その紙に残っていた毛髪を集め、
そこから当時の人たちが何を食べていたのかを推定したのです。
https://www.qst.go.jp/site/press/20260817.html?utm_source=chatgpt.com

約7万冊の古書を調べ、
毛髪の分析まで行ったというから、なかなかすごい研究です。

その結果、江戸から明治の都市の庶民は、
米や小麦などのC3植物と、
海産魚を多く食べていたことが分かりました。
さらに、時代が進むにつれて、
アワやキビなどのC4植物の割合が減り、
C3植物への依存が強くなっていったそうです。

ここで、私は「ん?」となりました。
C3植物って、米だけじゃないんですね。
小麦もC3植物です。

そういえば、うどん、そうめんなど、
小麦を使った麺や粉ものも、
日本には昔からたくさんあります。

小麦が日本に伝わったのは弥生時代とされ、
奈良時代にはすでに栽培されていました。
江戸時代には、
うどんやそうめんなどの粉食も広く食べられていた。

つまり、
「昔の日本人=米」
だけではなかった……

しかも、この研究では、
当時の人の毛髪に含まれていたミネラルも調べています。

塩素、カリウム、カルシウム、マンガン、鉄、銅、鉛など。
現代の都市住民より濃度が高いミネラルもありました。

その理由の一つとして研究者が考えているのが、
現代より精白度の低い米を食べていたことです。
今、私たちが毎日食べている真っ白な白米。
でも、昔の米は、今ほど精白されていなかった。

「昔の日本人が食べていた米」と聞いて、
私たちが思い浮かべる真っ白なご飯とは、
ずいぶん違っていたのかもしれません。

農水省がこんな説明をしています。

和食としての米、昭和35年ごろまで
一部の階層を除いて
米の飯はお盆や正月などのハレの日にしか
口にできない貴重なものだった、
農村の日常食としては
かて飯や雑穀飯が挙げられている。

そう考えると、
「日本人は昔から米を主食としてきた」
という言葉も、
ちょっと慎重に考えたほうがよさそうです。

もちろん、米が日本文化の中で、
とても重要な存在だったことは間違いありません。
米は税や年貢の基準にもなり、
神事にも使われ、
餅や正月などの習俗とも深く結びついてきました。

ただ、
「米が日本文化にとって重要だった」ことと、
「日本人はみんな、昔から毎日、白い米を食べていた」
ことは、同じではありません。

ここで思い出したのが、柳田國男と、坪井洋文です。
柳田國男は、日本の民俗文化を
稲作や米、餅、祭りなどとの結びつきから読み解いていきました。

それに対して、坪井洋文は、
「餅なし正月」という風習に注目します。
正月なのに、餅をつかない。
そんな地域が、日本各地にある。

そこから坪井は、米を中心とする稲作単一文化だけでは、
日本の民俗文化を説明できないのではないか、
と問いを投げかけました。

坪井洋文は、餅なし正月を、
単なる珍しい風習とは見ませんでした。
そこに、米や餅を中心とする稲作文化とは異なる、
もう一つの文化体系を見ようとしたのです。

私たちはつい、
「日本人は米を食べてきた」
↓
「米は日本文化の中心だった」
↓
「だから、日本人=米」
と、ひとまとめにしてしまう。

そもそも、ここでいう「日本人」って、誰のことなんでしょう?
江戸の町人?農村の人?山間部の人?東北の人?沖縄の人?

「日本人」という大きなくくりで考えると、
食べていたものも、暮らしも、文化も、
ずいぶん違っていたはずです。

そして今、
「日本人には米」
「小麦は外国から入ってきた食べ物だからダメ」
という話を耳にすることがあります。

でも、小麦だって弥生時代から日本にありました。

……あれ?

私たちが「昔ながらの日本食」と呼んでいるものって、
いったい、いつの、誰の食文化なんでしょうか。

そんなことを考えていたら、
「日本人=米」
という、あまりにも当たり前だと思っていたことが、
ちょっと不思議に見えてきました。

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